【パンジーを食べるのは危険?】安全な食用花の育て方と楽しみ方


花屋さんなどで買ったパンジーは食べても大丈夫かな?
お庭やプランターを彩るパンジーを見て、「こんなに可愛いパンジーを食べることはできるのだろうか?」と疑問に思ったことはありませんか。実は、パンジーを食べることには注意が必要で、毒性の観点から人間にとって安全とは言えない場合があります。
また、パンジーやビオラを食べることと、食用の違いを正しく理解することも大切です。庭では人間だけでなく、花を食べる動物、鳥、虫などがいることにも気をつけなければなりません。
この記事では、食用として注目されるエディブルフラワーのパンジーに焦点を当て、その安全性や、気になるパンジーの味はどうか、そしてパンジーの効能は期待できるのかについて詳しく解説します。
- 市販のパンジーがなぜ食べられないのか
- 安全な食用パンジー「エディブルフラワー」とは何か
- 家庭で食用パンジーを育てるための具体的な方法
- パンジーの花を食べてしまう生き物とその対策の概要
パンジーを食べる前に知っておきたいこと

- 市販の苗は危険?毒性と人間の関係
- パンジーとビオラを食べる食用の違い
- 花を食べる動物、鳥、虫にも注意が必要
- 虫の正体と対策は別記事で詳しく解説
- 食用でないパンジーの効能は?
市販の苗は危険?毒性と人間の関係

結論から言うと、花屋さんやホームセンターで販売されている観賞用のパンジーを食べるのは絶対に避けるべきです。
その理由は、主に2つあります。一つは「農薬の使用」、もう一つは「植物が持つ毒性成分」です。
観賞用に散布される農薬
市販されている花の苗は、病気や害虫から守り、美しい状態を長く保つために、食用の基準とは異なる農薬が使用されているのが一般的です。これらの農薬は、口にすることを想定していないため、人体に入ると健康を害する危険性があります。
観賞用の花に付着した農薬は、水で洗い流しただけで完全に除去できるものではありません。安全性が確認されていない以上、たとえ少量でも口にするのは非常に危険です。
パンジーが持つ毒性成分
パンジーやビオラを含むスミレ科の植物には、ビオリンやサポニンといった成分が、特に種子や根茎に多く含まれているという情報があります。
これらの成分は、人間が大量に摂取した場合、嘔吐や下痢などの中毒症状を引き起こす可能性があるとされています。観賞用の品種がどの程度の成分を含んでいるかは明確ではありませんが、リスクを冒してまで食べるべきではないでしょう。
「自分で種から無農薬で育てれば大丈夫?」と思うかもしれませんが、毒性成分のリスクは残ります。
安全に楽しむためには、やはり「食用」として特別に栽培されたものを選ぶのが最も確実な方法です。
パンジーとビオラを食べる食用の違い

パンジーとビオラは、どちらもスミレ科スミレ属の植物で、植物分類学上は厳密な区別がありません。一般的には、花の大きさによって呼び分けられています。
食べられるかどうかという観点では、パンジーもビオラも基本的な考え方は同じです。<つまり、観賞用のものは食べられず、食用として栽培されたもの(エディブルフラワー)であれば安全に食べられる、ということです。
両者の特徴を簡単な表にまとめました。
項目 | パンジー | ビオラ |
---|---|---|
花の大きさ(目安) | 直径 約5cm以上 | 直径 約4cm以下 |
見た目の特徴 | 花が大きく華やか。品種によってはフリル咲きも。 | 小輪で可憐。たくさんの花を咲かせる。 |
食用としての利用 | 花びらが大きいので、料理の主役にもなりやすい。 | 小さなサイズを活かして、サラダやスイーツの飾りに使いやすい。 |
安全性 | 「エディブルフラワー」として販売・栽培されたもののみ安全 |
エディブルフラワーとして利用する場合、パンジーはその存在感から一輪でもお皿を華やかにし、ビオラは数を散らすことで可愛らしい印象を与えてくれます。用途に合わせて使い分けるのがおすすめです。
花を食べる動物、鳥、虫にも注意が必要

パンジーやビオラの花は、人間だけでなく他の生き物にとっても魅力的なごちそうです。庭で大切に育てているパンジーが、ある日突然食べられていたらショックですよね。主な”犯人”は、鳥や虫たちです。
鳥による食害
特にヒヨドリは、パンジーやビオラの花びらを好んで食べることがよく知られています。冬場は鳥たちにとってエサが少なくなる時期のため、庭先の柔らかくて栄養がありそうな花は格好の標的になります。
食べられ方が雑で、花びらがちぎられたように散らばっている場合は、鳥の仕業である可能性が高いでしょう。
虫による食害
夜行性のナメクジやダンゴムシも、パンジーの花を食べることがあります。これらは、昼間は鉢の裏や土の中に隠れていて、夜になると活動を始めます。花びらが滑らかに、あるいは穴が開くように食べられている場合は、これらの虫が原因かもしれません。
また、ツマグロヒョウモンという蝶の幼虫は、スミレ科の植物を食草とするため、パンジーやビオラの葉や花を旺盛な食欲で食べてしまいます。トゲトゲした特徴的な見た目のイモムシを見かけたら、この幼虫の可能性が高いです。
虫の正体と対策は別記事で詳しく解説

前述の通り、パンジーの花は様々な虫にとってもごちそうです。せっかく育てた花が食べられてしまうのは悲しいですよね。
ナメクジやイモムシなど、具体的な虫の種類ごとの見分け方や、薬剤を使わない安全な対策、効果的な予防策については、こちらの記事で詳しく解説しています。お悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
関連記事: パンジーの花を食べる虫の正体は?対策と3つの予防策を徹底解説
食用でないパンジーの効能は?

観賞用のパンジーを食べることは推奨されませんが、歴史を振り返ると、薬用として利用されてきた側面もあるようです。
ヨーロッパの民間療法として
ヨーロッパでは古くから、パンジーから抽出したエキスが民間薬として用いられてきた歴史があると言われています。そのエキスには浄化作用や抗炎症作用があるとされ、皮膚のトラブルなどに利用されてきたという記録があります。また、去痰作用や利尿作用も期待されていたようです。
(参照:各種ハーブに関する文献情報)
シェイクスピアの戯曲「夏の夜の夢」には、パンジーの汁が恋の媚薬として登場するなど、文化的な背景も非常に興味深い植物です。
これらの情報は、あくまで歴史的・文化的な背景や民間伝承に基づくものです。現代において、観賞用のパンジーに同様の効果を期待したり、自己判断で薬用として使用したりすることは絶対にやめてください。健康上のリスクを伴う可能性があります。
安全にパンジーを食べる具体的な方法

- 食用のエディブルフラワーパンジーとは
- エディブルフラワーパンジーの味は?
- 家庭でできる食用パンジーの育て方
- 食用パンジーの種の購入方法
- エディブルフラワーの活用レシピ
食用のエディブルフラワーパンジーとは

安全にパンジーを食べるための唯一の方法は、「エディブルフラワー」として特別に栽培されたパンジーを選ぶことです。
エディブルフラワー(Edible Flower)とは、その名の通り「食べられる花」のことを指します。観賞用の花との最大の違いは、安全性を第一に考えて栽培されている点にあります。
具体的には、以下のような環境で育てられています。
- 無農薬または低農薬での栽培:口にすること前提に、人体に有害な農薬は使用せず、安全な方法で病害虫対策が行われています。
- 衛生的な環境:食品として扱われるため、衛生管理が徹底された環境で生産されています。
スーパーのハーブ売り場や、専門のオンラインショップなどで「エディブルフラワー」や「食用パンジー」として販売されているものがこれにあたります。中には「エディブル・ムーラン」のように、食用を前提として開発された特定の品種シリーズも存在します。
エディブルフラワーとして販売されているものであれば、パンジーだけでなくビオラやナデシコ、ナスタチウムなど様々な種類の花を安心して楽しむことができます。
エディブルフラワーパンジーの味は?

「花の味」と聞いても、なかなか想像がつかないかもしれませんね。エディブルフラワーとして栽培されたパンジーは、どのような味がするのでしょうか。
実際に食べてみると、味自体は非常にあっさりとしていて、強い香りやクセもほとんどありません。食感はシャキシャキとしており、レタスなどの葉物野菜に近いと表現されることが多いです。
かすかに甘みを感じるという意見や、ほんのりとした苦味があるという意見もありますが、いずれにしても料理の味を邪魔するようなことはありません。そのため、どんな料理にも合わせやすいのが大きな魅力です。
パンジーの魅力は味そのものよりも、その美しい色彩にあります。一輪添えるだけで、普段のサラダやデザートが、まるでお店のプレートのように華やかになります。
また、栄養面ではビタミンAやビタミンCが豊富に含まれているとされています。
家庭でできる食用パンジーの育て方

エディブルフラワーは購入するだけでなく、ご家庭で自分で育てることも可能です。自分で育てれば、いつでも新鮮な花を収穫して楽しめます。
① 種・苗の準備
園芸店やオンラインショップで、「エディブルフラワー用」「食用パンジー」と記載のある種や苗を入手します。観賞用の種とは明確に区別してください。
② 土とプランターの準備
新品のプランターと、野菜用の培養土など、清潔なものを用意します。古い土を再利用する場合は、必ず熱湯消毒などを行って病原菌や害虫の卵を取り除きましょう。
③ 植え付けと管理
日当たりと風通しの良い場所で管理します。水やりは土の表面が乾いたらたっぷりと与えるのが基本です。肥料は、野菜用の有機肥料などを規定通りに与えます。
④ 病害虫対策
ここが最も重要なポイントです。絶対に観賞用の殺虫剤や殺菌剤は使用しないでください。
アブラムシなどが発生した場合は、手で取り除くか、食品成分由来のスプレー(食酢や重曹を水で薄めたものなど)を利用して対処します。
もし市販の苗を購入し、それを食用に切り替えたい場合は、植え付け後に咲いている花は一度すべて摘み取ります。その後、無農薬で育てて新しく咲いた花から収穫するようにしましょう。これは、購入時に付着している可能性のある農薬を避けるためです。
食用パンジーの種の購入方法

「家庭で食用パンジーを育ててみたい」と思ったら、まずは種や苗を手に入れるところから始まります。
食用パンジーの種や苗は、一般的な園芸店では取り扱いが少ない場合もありますが、以下の場所で探すことができます。
- オンラインの園芸専門店
- ハーブや野菜の種を専門に扱う種苗会社のオンラインストア
- 大規模なホームセンターの園芸
インターネットで「エディブルフラワー パンジー 種」や「食用ビオラ 苗」といったキーワードで検索すると、多くの商品が見つかります。
オンラインショップでは、様々な色や品種の種がセットになった商品も販売されています。育て方の説明書が付属していることも多いので、初心者の方でも安心して始めることができます。
購入する際には、商品説明をよく読み、「食用」であることが明確に記載されていることを必ず確認してください。
エディブルフラワーの活用レシピ

無事に食用のパンジーが手に入ったら、さっそく料理に使ってみましょう。味にクセがないので、アイデア次第で様々な使い方ができます。
サラダのトッピングに
最も手軽で見た目も華やかになるのが、サラダへのトッピングです。ベビーリーフやミニトマトと一緒にパンジーを散らすだけで、いつものサラダが特別なおもてなし料理に変身します。
スイーツの飾りに
ケーキやプリン、ゼリー、ヨーグルトなどに一輪添えるだけで、パティスリーのような仕上がりになります。特に、シンプルな見た目のスイーツほど、花の色彩が際立ちます。
氷の中に閉じ込めて(アイスキューブ)
製氷皿にパンジーと水を入れて凍らせれば、美しいフラワーアイスキューブが完成します。炭酸水やカクテルに浮かべれば、パーティーや記念日を盛り上げる素敵な演出になります。
砂糖漬け(クリスタライズドフラワー)
少し手間はかかりますが、卵白とグラニュー糖を使って砂糖漬けにすると、長期保存が可能になります。紅茶に浮かべたり、焼き菓子のデコレーションに使ったりと、活用の幅が広がります。
大切なのは、花の美しい形と色を活かすことです。加熱すると色や形が損なわれやすいので、基本的には生のまま、料理の仕上げに使うのがおすすめです。
安全にパンジーを食べるためのポイントのまとめ
- 観賞用として販売されているパンジーは絶対に食べない
- 観賞用の苗には食用に適さない農薬が使われている可能性がある
- パンジーの種子や根には微量の毒性成分が含まれるという情報がある
- パンジーとビオラは花の大きさで区別されるが安全性の考え方は同じ
- 安全に食べるには「エディブルフラワー」と明記されたものを選ぶ
- エディブルフラワーは無農薬または低農薬で栽培されている
- スーパーのハーブコーナーや専門のオンラインストアで購入できる
- パンジーの味はクセがなくレタスのようにあっさりしている
- 料理の味を邪魔せず彩りを添えるのに最適
- 家庭で育てる場合は必ず食用の種や苗から始める
- 栽培中も観賞用の農薬は絶対に使用しない
- 害虫対策は手で取り除くか食品由来のスプレーで行う
- サラダやスイーツの飾りに使うのが手軽でおすすめ
- 氷に閉じ込めたり砂糖漬けにしたりする活用法もある
- 基本的には加熱せず生のまま仕上げに使うのが良い





